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散歩しながら楽しい出会いを探しています!


by birdybirdy

友だち ②

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 少し前なんだけど ぼくは ブタに言ってやった。

「聞くところによると キミは イノシシと親戚だっていうじゃないか。どうりで よく似ているよ」

 ブタは いつもは たるんでいるホホを 少しひきしめていった。

「たしかにそうさ。まだ子ブタだった頃は お盆とかお正月には 田舎に帰って、よくイノシシ
の子どもたちと遊んだものさ。だけどイノシシとブタは あんまり性格は似ていないんだ。
あいつらときたら あらっぽくていけないよ」

「そうかなぁ。あのたくましいところが ぼくは好きなんだ」

「それじゃあキミは ブタよりイノシシの方が イイって言うのかい?」

「そうじゃないさ。ぼくはただ ブタの性格に イノシシのたくましさが加われば もうライオン
だって、トラだってかなわないくらいの風格が生まれるに違いないと思うわけさ。そうだろう?」

「つまり キミは ぼくにイノシシみたいになれって言うだね」

「まあ そんなところかな」





「だけど今からじゃあ どんなに逆立ちしたって、ブタがイノシシになんて なれっこないさ」

「そんなことはないよ。まったく血がつながってないわけじゃないんだし。ブタがイノシシになる
のなんて、ボクがブタになるより、よっぽど簡単だと思うよ」

「そうかな~」

「そうさ。ぼくは ブタがイノシシになってっくれたら ありったけの小遣いで カップメンをご馳走
してあげてもいいと思ってるんだ」

 カップメンと聞いて、ブタの目がキラリと光った。

「でも、どうやったら ブタがイノシシになれるんだい?」

「ブタの親戚のイノシシは いったいどこにいるんだい」

「そうだな~。うん、あいつらはいつも森の中にいるよ!」

「それじゃあ、キミも森の中へ行けばいいじゃないか。つまり自然に帰るってわけさ!」
「森の中だって・・・。なんだか不安だな~。だいいち食べ物は、どうするんだよ」

「食べ物なんて、森の中にはいっぱいあるじゃないか。今は ちょうど実りの秋だからね。
カキやクリやキノコなんかが 食べ切れないくらいあるさ」

「えっ!そうかい。行く行く。ボクは キミにためにりっぱなイノシシになるよ!」

 ブタは すっかりその気になったみたいだ。

「そうか、ありがとう。それじゃあ、さっそく出かけることにしよう」

「ええっ もう出かけるのかい? お昼を食べてからでいいだろう?」

「何をいってるんだい。そんなことじゃ りっぱなイノシシになんてなれないよ」

 そういってやると ブタは しぶしぶ表へ出ていった。

 ぼくは ブタの気持ちが とちゅうで変わるといけないと思ったから 森の近くまで見送る
ことにした。

 森の入り口まできたとき、ぼくはブタの前足をしっかりとにぎって

「どうか りっぱなイノシシになってくれ!」

と、泣きそうになるのをこらえながら お別れをいった。

 ぼくだって ブタと別れるのは つらかったんだ。

 でもブタのヤツは ぼくの別れの言葉なんて上の空で 早くも鼻をヒクヒクさせて、
食べ物のありかをを探しはじめていた。

 そして、何かのにおいに 誘われるように、ふらふらと森の中へと入っていってしまった。

ぼくの方なんか 一度も振り向かずに・・・。

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by birdybirdy | 2006-11-16 08:55 | ・童話